第6回 SUWAラフダイヤモンドジュエリーコンテスト2015 最終審査結果

ごあいさつ

おかげさまで、今年も第6回SUWAラフダイヤモンドジュエリーコンテストを開催する運びとなり、国内を中心に130点ものご応募を頂きました。告知をして頂いた関係機関の皆様、および、ご応募頂いた皆様に心より御礼を申し上げます。

今年の募集アイテムは『ピンズ』とさせて頂きました。審査につきましては、例年と同様、一次審査で選出したデザイン3点を実際のジュエリーに仕立てて、出来上がった3作品で最終審査を行いました。出来上がった作品はどれも良く出来ており、最終選考は意見が割れて難航しました。今年は、着眼点とインパクトで評価の高かった作品と、既存のモチーフではありますがエレガントに仕上がり、色んな使い方が出来る作品の2つを最優秀賞として選出いたしました。

今年も山脇美術専門学校様のご協力を得て2015年7月17日(金)~7月22日(火)の4日間、全応募作品を一堂に展示する機会を頂き、応募者の皆さんの思いが込められた個性ある力作と実際のジュエリーになった入賞作品を一般およびプレスの方々に広くご紹介させて頂き、盛況のうちに終了したことをご報告いたします。初日にはシンポジウムと表彰式を行わせて頂きました。山脇美術専門学校様の多大なるご協力に心より感謝申し上げます。

ダイヤモンドは15億~20億年前、地下150-200kmで生成したと言われています。そして、地球の地殻変動と火山活動によって地表近くに押し上げられたものを人間が採取してきました。歴史を振り返ると、研磨せずに使われていた期間のほうが実は圧倒的に長かったのです。

古代ローマ(紀元前3世紀)の人々は、正八面体のダイヤモンドの類稀な硬さに驚き、小さなダイヤモンドに大きなパワーを感じていたようです。ダイヤモンドは身を守ってくれると強く信じて、その想いをジュエリーにして身に着けました。ダイヤモンドの研磨が可能になった14世紀末以降も、人々は正八面体のダイヤモンドのパワーを信じて、自然のままのダイヤモンドを好んできました。

研磨したダイヤモンドの強い輝きに比べると控えめではありますが、1つ1つが異なる個性と力強さを放つ『自然のままのダイヤモンド』が永く身に着けられるスタイルに仕立てられることを期待して、このコンテストを開催しております。

ダイヤモンドは「硬く」「小さく」「時空を超えた」存在です。このラフダイヤモンドジュエリーコンテストを通して、ダイヤモンドの永遠の価値と魅力を感じて頂ければ幸いです。

平成27年7月吉日
諏訪貿易株式会社
取締役社長 横川道男

※ 返却ご希望の方のデザイン画は、7/30(木)に全て投函いたしました。近日中に配達されると思いますので、今しばらくお待ち下さい。

作品展の様子

作品展の様子 作品展の様子
作品展の様子 作品展の様子

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

作品展の初日にシンポジウムと表彰式を行いました。入賞者3名、審査員2名、作品を製作した職人2名をパネリストに迎え、それぞれの立場からお話を頂きました。入賞3名からは、デザインするにあたり、一番こだわった点を伺ったところ、コンセプトを大事にしていて、まずそこを固めるというお話がありました。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

審査員からは、審査で一番重要視した点、職人からは、デザイン画から作品にしていく過程をスライドで解説頂き、デザイン画から実際のジュエリーをする際の工夫や苦労を説明して頂きました。それぞれ立場の異なる3者からの話はとても興味深く、参加者のみなさんにとって、とても有意義な時間だったようです。

最終審査結果

最優秀賞2名 (順不同)

最優秀賞

牧田 裕美さん (東京都) タイトル『くものい』

グリーンのラフダイヤモンドを蜘蛛の胴体に見立て、小粒のイエローのラフダイヤモンドを蜘蛛の巣に散りばめ、それぞれ別のブローチとして、又、一緒に合わせて身に着けられることも可能なピンズ。身に着け方にバリエーションがある点を高評価した。一緒に着けると蜘蛛の巣の上を動いているかのように感じられるし、小粒のイエローラフダイヤモンドが揺れて目を引いて、とてもエレガント。松川氏が上手く繊細に仕上げてくれた。

『くものい』牧田 裕美さん 東京都
最優秀賞

峰岸 理恵さん (千葉県) タイトル『Whiskey on the rocks』

ラフダイヤモンドを氷に見立て、ウィスキーグラスに浮かんでいる様をモチーフにした、とてもユニークな着眼点を高評価した。遊び心もあり、とてもインパクトがあった。実際のジュエリーも上手く仕上がった。実際に身に着けてみると、とても目を引くので、話の種になりそう。重くならないか危惧したが、職人、横山氏が上手く仕上げてくれた。

『Whiskey on the rocks』峰岸 理恵さん 千葉県

優秀賞1名

優秀賞

朝稲 千秋さん (東京都) タイトル『advance』

カメラのレンズを通して見られる太陽光の現象レンズフレアをモチーフに、上手くラフダイヤモンドを活かした点を高評価した。ソーヤブルのラフダイヤモンドとフレアが幾何学模様でつながり、色使いもアクセントになっている。キャッチにも星の装飾を施し、身に着けると目を引き、モダンに仕上がった。職人、松川氏がきれいに仕上げてくれた。

『advance』朝稲 千秋さん 東京都

チャレンジデザイン賞 2作品(順不同)

『 かつて月には海があった 』石井 加奈子さん 東京都

『 かつて月には海があった 』
石井 加奈子さん 東京都

『Drop』峰岸 理恵さん 千葉県

『 Drop 』
峰岸 理恵さん 千葉県

佳作 7作品(順不同)

『 眺める楽しみ 』吉川 美和子さん 東京都

『 眺める楽しみ 』
吉川 美和子さん 東京都

『開 (kai)』岡本 奈緒美さん 京都府

『 開 (kai) 』
岡本 奈緒美さん 京都府

『simple』斎藤 文太郎さん 東京都

『 simple 』
斎藤 文太郎さん 東京都

『Across the Universe』早川 恭平さん 東京都

『 Across the Universe 』
早川 恭平さん 東京都

『薫風』今井 功さん 大阪府

『 薫風 』
今井 功さん 大阪府

『Green Wing』中村 美香さん 愛知県

『 Green Wing 』
中村 美香さん 愛知県

『まんだら』瀬戸 ひかりさん 神奈川県

『 まんだら 』
瀬戸 ひかりさん 神奈川県

コンテスト総評

今年の募集アイテムは『ピンズ』でした。聞きなれない『ピンズ』で困惑した方が多かったようで、応募開始当初、ピンズの定義についての質問を多く頂きました。そのため、今回の応募のピンズの定義を以下のように定めさせて頂きました。

『一般には、針を衣服などの布地に貫通させて、バタフライクラッチ(Butterly Clutch)と呼ばれる留め具で固定するバッジの一種を指しますが、今回のコンテストでは、ハットピン、ラペルピン、タックピン、スティックピンなどもOKとします。場面の大きいブローチよりは、コンパクトなブローチをイメージして下さい。皆様の自由な発想を見たいとの委員会の意向により、厳密な定義をして範囲を狭めるより、範囲を広めにすることにしました。』

今回も応募期間中に原石下見会を開催しました。下見会には遠方からご参加の方もいらっしゃいました。とてもありがたく思います。毎年、テーマのラフダイヤモンドの動画をサイトに載せておりますが、1つ1つ形の異なるラフダイヤモンドは形の把握が難しく、表現の難しさがあったかと思います。今まで入選なさった方々を見ると、下見会でラフダイヤモンドを手に取った方が多いように感じます。やはり、実物を手に取って見ると、イメージがいっそう膨らむのでしょうか。

どの応募作品も皆さんの努力が伝わる力作ばかりで、審査員5名、大いに悩み、議論を交わし、選考を行いました。今年は入賞者3名とも学生でした。佳作も含めた入選12名中では、学生6名、デザイナー2名、会社員3名、主婦1名でした。皆さんの今後の活躍を応援したいと思います。

また、今年も昨年同様、佳作の中から意欲的なデザインを表彰する『チャレンジデザイン賞』を設けて、2名が選出されましたことを報告いたします。

各審査員からのコメント

露木 宏 氏 (日本宝飾クラフト学院 理事長)

アイテムを『ピンズ』だけに絞ったコンテストは私の知る限り、初めてだと思うし、それにラフダイヤモンドを合わせるのは、将来性を感じさせる、とても画期的な試みだと思う。『ピンズ』というアイテムは、ユニセックスアイテムではあるが、これからもっと普及して良いと思う。特に男性に。全体を見ても、今回はとても面白いものが選出されたと思う。

石倉 貞江 氏 (日本ジュエリーデザイナー協会顧問)

実際にジュエリーにして身に着けた時にどうかという視点で楽しく審査させて頂いた。ラフダイヤモンドという素材の持つ力を活かし、人が一瞬にして、その魅力に引き込まれる程のインパクトのあるピンをデザインすることに取り組んだ作品が多かった。堅くなりすぎず、楽しい遊び心の感じられるモダンなデザインが選出されたと思う。

大前 英史 氏 (エディトリアルデザイナー、大前デザイン室代表)

課題は3つあると思う。1つは応募者の課題:一部のコアなファンには人気だが、まだまだ一般的でないラフダイヤモンドの魅力をどうジュエリーに活かすのか。2つ目は、審査側の課題:画が上手い作品を選ぶのか、それとも、画は荒削りだが、とても良いジュエリーになる可能性を感じさせるものを選ぶのか? 画が上手いほうが選ばれやすい傾向は否めないが、もし仮に全応募作品をジュエリーに製作したとしたら、別の作品が選ばれる可能性も大いにあり得る。3つ目は主催者側の課題:魅力的なデザイン画を引き出すための主催側の投げかけ方の力量が問われると思う。

長嶋 泰子 氏 (デザイナー・第3回(2012)当コンテスト最優秀賞受賞)

とても楽しく審査させて頂いた。今回、入選した3作品はそれぞれのコンセプトが明確だったが、着眼点がユニークでインパクトがあり、上手く作品に仕上がったものが最優秀賞に選ばれたと思う。ただ、今回はコンセプトにこだわりすぎているデザインが多いと感じた。そういう意味では自己完結型のデザインが多い。ジュエリーは人に身に着けてもらうものだし、特にコンテストでは、審査員や製作する職人、作品展を見に来る人などへのコミュニケーションや社会性が求められると思うので、今後、応募者の方々にはより踏み込んだデザインを期待したい。

吉岡 千加子 氏 (マーケティングプランナー、YSプランニング代表)

今回も楽しく審査させて頂きました。当コンテストも、今年で6回目を迎え、ラフダイヤモンドの魅力を活かしたデザインが多くなってきたように思います。素材としてのラフダイヤモンドの個性とご自身の感性が融合した新しいジュエリーの誕生を期待します。

審査の様子

審査の様子 審査の様子

一次審査は、2015年5月28日(木)、諏訪貿易(株) 2Fサロンにおいて、個人情報を全て伏せて厳正に行なわれました。最初に、各審査員が全作品のデザインと意図を確認しながら、それぞれの感性で、130点より31点を選出しました。

なお、製作指示書の内容評価については、一部の審査員から製作指示に関する評価が難しいとの意見がありましたので、事前に弊社内で拝見させて頂きました。審査になるべく影響しないよう、製作に関して非現実的なもののみ、審査員に伝えさせて頂きました。

その後、その31点について、ラフダイヤモンドの魅力が活かされているか (10段階評価)、日常身に着けて長く楽しめるか (5段階評価)、オリジナリティ (5段階評価)、の3項目で採点され、上位12点が入賞作品として選考されました。

審査の様子 審査の様子

更に、実際に製作した場合の仕上がり具合、着用性などを含め、協議によって、12点から入賞3作品が選考されました。この時点で残りの9点の佳作が決定し、2015年6月1日(金)にサイト上にて一次審査結果発表後、入賞作品3点の製作に入りました。今年も、昨年同様、1作品を横山達三氏に、2作品を松川覚氏に製作を依頼しました。

7月初旬に、入賞3作品が完成し、2014年7月10日(金)に最終審査を行い、最優秀賞を決定しました。最後は審査委員の意見が割れて難航し、着眼点とインパクトで評価の高かった作品と、既存のモチーフではありますがエレガントに仕上がり、色々な使い方が出来る作品の2つを最優秀賞とさせて頂きました。短い期間で作品を製作して頂いた、横山達三氏、松川覚氏に感謝を申し上げます。

コンテストの内容

テーマ

ラフダイヤモンドの美しさが引き出され、いつも身に着けられて、世代を超えて受け継がれてゆく『ピンズ 注1』(メンズ、レディス、ユニセックス)のデザイン。

使用素材

ラフダイヤモンドは以下の3種のいずれかを使用。原石は動画で全体像をご覧頂けます。

A. ソーヤブル

A. ソーヤブル 注2 1.5ct 1石
ブラジル産 1.52ct
5.8 x 4.8 x 6.7mm

B. メイカブル

B. メイカブル 注3 0.9ct 1石
ロシア産 0.90ct
6.5 x 4.6 x 3.0mm

C. メイカブル

C. メイカブル 注3 0.7ct 1石・0.26ct 3石
ロシア産 0.73ct フラット(扁平)
7.8 x 6.2 x 1.4mm
DRコンゴ産 0.26ct x 3pc
2.8-3.0mm四方

注1 ピンズ : 募集アイテムのピンズについて、問合せをい多数頂いておりますので、当コンテストの定義をお知らせいたします。一般には、針を衣服などの布地に貫通させて、バタフライクラッチ(Butterly Clutch)と呼ばれる留め具で固定するバッジの一種を指しますが、今回のコンテストでは、ハットピン、ラペルピン、タックピン、スティックピンなども OKとします。場面の大きいブローチよりは、コンパクトなブローチをイメージして下さい。皆様の自由な発想を見たいとの委員会の意向により、厳密な定義をして、範囲を狭めるより、範囲を広めにすることにしました。ご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せ下さい。

注2 ソーヤブル (Sawable) : 2つのピラミッドを合わせたような正八面体に代表されるダイヤモンドの原石です。この原石は比較的素直に結晶し、透明度が高いのが特徴です。宝石用原石の10〜15%しかなく、効率よく研磨できる大変貴重なものです。

注3 メイカブル (Makeable) : 形は様々で、透明度の高いものから中級品質のものまであり、それぞれの形に合わせて研磨されます。原石の形が悪くても良質に仕上がるものがある一方、美しさに欠けるものが生まれることもあります。今回のコンテストで使用するものは、透明度の高い美しい原石です。

審査基準

・ラフダイヤモンドの美しさが活かされているか
(Creative use of rough diamonds)

・独創性(Originality)

・着用性(Wearability)

・次の世代に受け継がれてゆく普遍性
(Universal design that will go beyond generations)

・製作指示の内容(Direction for manufacturing)

賞・賞品

最優秀賞 : 1名 賞状、作品の写真、賞金 10万円
優秀賞 : 2名 賞状、作品の写真、賞金 3万円
佳作 : 7名 賞状、諏訪恭一著「ダイヤモンド」注1か「宝石3」注2
チャレンジデザイン賞 : 1名 賞状、賞金 1万円

注1「ダイヤモンド」はDe Beers Institute of Diamonds社長Andrew Coxonとの共著。日本語版、英語版、中国語版からお選び頂けます。
注2「宝石3」は日本語版のみとなります。

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