「宝石は稀少なもの」とよく言われます。宝石の稀少性は、産出が少ないということだけでなく、需要が高いということを理解することが大切です。有史以来、宝石用に研磨されたダイヤモンドは、ロンドンバス1台分、約100トン(5億カラット)と言われています。これだけ供給されたとしても、たくさんの人々が欲しいと思っているので価値が高いのです。
例えば、稀な知られていない石が一つだけあり、一人だけ欲しい人がいても、稀少ではありません。いくら一つしかなくても、誰もそれを知らず、欲しがる人がいなければ、文字通りただの石だからです。スピネルは、ダイヤモンドよりかなり産出が少ないのですが、欲しい人が少ないので、稀少性はダイヤモンドより低くなります。スピネルの赤系統のものは美しく、硬度が高く耐久性があり、宝石としての特性は高いのですが、需要は低いです。それは産出が限られ、商品化されて市場に出る絶対量が不足し、知名度が低く、人気がでないからです。
宝石の稀少性は、供給が少ないというより、伝統に裏付けされた需要によって支えられています。消費者からの信頼がなくなれば需要もなくなります。宝石にとって大切なのは、消費者からの信頼ということを忘れてはなりません。 |