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宝石辞典

産地と種類


1896年に出版されたドイツの宝石学者マックス・バウワーの著書「宝石」によると、ルビーの産地はミャンマー(ビルマ)のモゴック地方が主で、タイやスリランカなどは、その品質の低さと量の少なさから重要視されていませんでした。しかし1960年に起きたビルマの政変と鉱山の国有化は、モゴック産ルビーの産出を激減させてしまいました。そして、当時品質が低いとされてきたタイ産ルビー(タイ・カンボジア国境のカンボジア側のパイリン地区を含む)が見直しされるようになったのです。これは加熱による色の改良の技術が向上したためです。そして1993年を境にミャンマーのモンスー産のルビーが市場での競争力をつけ、タイ産にとって代わりました。そのほか東アフリカやベトナムから産出されています。

モゴック産ルビー(加熱)

モゴック産


モゴック産ルビーは紫外線に当たると強い蛍光を発し、パープルみの赤になります。この強い蛍光性が、他の産地にない柔らかな色みを出しているのです。しかしジェムクオリティで大粒のものは少なく、5カラット以上になるとダイヤモンドをはるかに凌ぐ価格になります。現在では、多くがタイのバンコクに運ばれて研磨されています。

タイ産


タイ産ルビーの主な鉱山は。タイのチャンダブりのクラン地区とカンボジアのパイリン地区です。色の淡すぎるもの、濃すぎるもの、透明度に欠けるものが多いのですが、熱処理技術の向上によって、黒みを少なくするなど色の改良が可能となり、商業的に使用できる品質が飛躍的に増えました。ジュエリークオリティとアクセサリークオリティではリング台などの規格サイズに合った研磨がされるようになり、ジュエリーとしての使いやすさが向上しました。

モゴック産ルビー(加熱)

スリランカ産


通常、色の淡いものが多いのですが、モゴック産に匹敵するものも稀に産出します。スリランカはサファイヤの産地として非常に重要ですが、淡めのルビーも透明度が高く、美しいものもたくさんあります。この写真は明度3のスリランカ産ルビーで、透明度も高く輝きも十分で、明度6以上のタイ産ルビーよりも美しいと、私は思います。

品質の見分け方


モゴック産ルビーについては、クオリティスケールのビューティグレードを理解することが大切です。Sは輝きのある美しい色で、Dは透明度が低く美しさに欠けるのがわかります。ルビーと名がつけば高値をつけることがありますが、半透明なものは透明なものに比べ、美しさが低いと見るのが適切です。


一方、ルビーの明度については、どれくらいの濃さが最適なのかは意見の分かれるところです。任意に行った300名(男女比率は半々)アンケートでの好まれるルビーの色は、明度6が60%、明度5が35%、明度4が5%という結果でした。宝石は厳密には一つひとつが違うものであり、好みもありますが、伝統的にSの6と5の境界付近が最も好まれるようです。しかしジュエリーにセットされた状態や夜間の暗い照明下での美しさを考慮すると、それより淡目のSの5と4が最適な明度といえるかもしれません。


「宝石2」にRUBY(無処理)が掲載されています。ご参照ください。


選び方


資産性を重点に逸品を選ぶなら、稀少性の高い6Sのピジョンブラッドをお勧めします。美しさを重点にするのならば5Sもお勧めで、将来稀少性が高くなる可能性があります。


通常、店頭ではモゴック産のルビーと明示して販売しているところは少ないのが現状です。しかし100万円以上のものは、産地がどこかを確認すると良いでしょう。どくわずかの違いですが、比べてみるとモゴック産の特徴がわかります。特に若干淡めのところでは、ピンクがかった明るい色がモゴック産の特徴で、ジュエリーとして選ぶポイントになります。アクセサリークオリティで原産地表示をするのは、購入者に低品質のものを価値あるものと錯覚をおこさせるので、業界としては自粛しています。しかしジェムクオリティの100万円を超えるものに原産地を表示することは必要で、今後のジュエリー業界の課題であると思います。


1カラットサイズのジュエリークオリティの価値は、石のみで、1個当たり3,000USドルが目安です。(2004年現在)


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