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宝石辞典

色みの幅


タイ産ルビーの品質を知るには、まずレッドなのか、レッドパープルなのか、レディッシュパープルなのかを把握することが大切です。一般的には宝石は産地ごとに決まった色みがあり、色みが産地の特色の一つになっていますが、タイ産ルビーの場合は、オレンジに近い赤から赤みのパープルまで幅広く存在しています。

タイ産ルビー (加熱)

レッド


わずかにオレンジがかった赤で最高の色みとされ、6Sのものにはビルマ産のピジョンブラッドに匹敵するものも存在します。この種のものは、一見しただけではタイ産かモゴック産かの判断がつきにくく、インクルージョンや蛍光性などから総合的に判断する必要があります。しかし残念ながら、大部分は色が濃すぎて、透明度の低い濁ったものが多く、ビューティグレードはB、C、Dのジュエリークオリティとアクセサリークオリティです。

RP(レッドパープル)


典型的なタイ産の色みで、多くのタイ産ルビーがこの色みの中に入ります。タイ産ルビーの特徴の一つに、明度が淡くなっても色みは変化しないということがあげられます。これはモゴック産ルビーの、色が淡くなるほど強い蛍光を発し、色みが赤からパープルに変化するという特徴とは異なります。淡めのタイ産ルビーは色のりが悪くなり、残念ながら魅力に欠けます。

タイ産ルビー (加熱)

rP(レディッシュパープル)


パープルに近い赤で、かなりのブルーみが感じられます。けれども青紫のバイオレットサファイヤと比べると赤みが強く、赤の範囲に入ります。この色みの中ではSとされる美しいものでも、ルビー全体のビューティグレードではBとされます。

品質の見分け方


左の色みの幅で説明したように、タイ産の品質で大切なのは色み(色相)です。レッド、レッドパープル、レディッシュパープルと青みがかっていくほど、ルビーの色相としては低いと判定します。レディッシュパープルの場合は、非常に美しくてもルビーとしての美しさの評価は低く、ビューティグレードはBとされます。


どの宝石でも、一般に透明度が高いものは美しいものが多いのですが、タイ産ルビーには時として色に深みがない(色が水っぽい)ものがあります。これは素材そのものに起因します。品質を見分けるには形(なり)の良さ、色ムラ、彩度、インクルージョンの有無などをポイントにした全体の美しさを見極めていきます。


次ページのクオリティスケールは、レッドパープルのものから選ばれたルビーで構成されています。


選び方


タイ産ルビーを選ぶコツは、黒みのものを避けることです。特に照明の強い店頭では黒みが目立たず、かえって赤が際だって見えてしまうので、何か物の陰に置いて見るなどの注意が必要です。また蛍光灯の下では他の品物かと思うくらい色が悪く見えることも覚えておくとよいでしょう。


小粒の材料宝石のほとんどがタイ産(1980年代)で、個数を使ったバンドタイプのリングやジュエリーが多く作られています。小さくカットしても美しい赤を引き出すことができるので、その特徴を生かした小粒のもので作られたバンドタイプのリングブローチなどを選ぶことも賢明な選択です。


1カラットサイズのジュエリークオリティの価格は、石のみで、1個当たり2,500USドルが目安です。(2004年現在)


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