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宝石辞典

光源と明暗による見え方の違い


宝石の色は光源と明暗によって大きく見え方が違ってきます。濃紺のスーツやバッグが室内では黒に見え、太陽光の下で初めて濃紺だとわかったという経験をお持ちの方は多いでしょう。宝石の場合はもっと大きな差が生じます。宝石に入る光の強さや、どんな光が当たるかで色が変化して見えるのです。

晴れた日の昼近く、北光線(北向きの窓から入る自然光)で見ていたルビーを、夕刻や雨の日の光線で見ると、その品質が半分以下に下がったように見えます。単にその宝石の色が暗く見えるというだけでなく、美しさが欠けて見えるのです。プロは、基準となるマスターストーン(付け石)と比較して品質判定をするので、条件が変化しても品質の判定を間違えることはありませんが、経験の浅い人や、勘を頼りにしている業者の判定はおぼつきません。ニューヨーク、ジュネーブ、東京など、世界の信用のおける宝石商は、必ずマスターストーンや自社の在庫と比べて、品質確定をしています。

ルビーは、白熱電灯の下で特に美しさが発揮されます。ちょうど食卓に並んだ料理が白熱電球の下では、蛍光灯に比べおいしそうに見えるのと似ています。蛍光灯の下では、ルビーも食卓の料理も精彩を欠き、美しさが半減します。赤系と橙系の色の宝石は、蛍光灯の下では美しさを欠いて見えるのと同時に、各々の宝石の品質の比較もしづらいのです。

反対にサファイヤやアクアマリンなど、ブルー系の色の宝石は、白熱電灯の下よりも蛍光灯の下で見たほうが、美しく見えます。また、これらの宝石を蛍光灯の下で見ると、品質の比較も容易で、少しの差でもはっきりと判定できます。

同じルビーでも写真のように、1.晴れた日の北光線、2.雨の日の光線、3.白熱電灯の下、4.蛍光灯の下、と光源によって色が違って見えるものです。室内での宝石の色は、白熱電灯と蛍光灯の光をミックスして確認するのがよいでしょう。

1. 晴れた日の北光線


モンスー産ルビー(加熱)

2. 雨の日の光線


モンスー産ルビー(加熱)

3. 白熱電灯の下


モンスー産ルビー(加熱)

4. 蛍光灯の下


モンスー産ルビー(加熱)

品質の見分け方


第一印象の美しさは大切です。ひと目見て美しさを感じさせるものは、透明度が高く、宝石全体にモザイク模様のバランスがとれてメリハリがあり、姿・形の良さが出ているからです。

フランス人は濃いめ(明度7・6)を、イタリア人や日本人は淡め(明度5・4)を好む傾向にあります。世界中からバイヤーの集まるバンコクでは、国によって色の濃淡の好みがさまざまなため、美しいものには広い範囲に高い値段がつけられています。色の濃淡は好みによる需要と、供給のバランスということがわかります。

最後に不完全性の判定ですが、欠点や耐久性を損うものでない限り、肉眼で見えないキズには神経質になる必要はありません。しかし、10倍に拡大して見える表面のキズやスクラッチ(引っかき傷)をどこまで許容するかなど、仕上げの善し悪しの基準は、プロが責任を持つべき領域です。

選び方


ジュエリーの構想にマッチしている品質かどうかが、選び方のポイントです。メインの石にモンスー産ルビーが使われているリングは、やはりその品質の善し悪しが、リング全体の格を決めるので、存在感があるジェムクオリティ、または厳選されたジュエリークオリティがおすすめです。いくつかの小粒の宝石が使われているスタイルの場合は、全体の粒の、色の濃淡と質が合っているかどうかが大切です。

ほかの宝石にも共通することですが、光の弱い所で身につけても美しさを発揮するのは、多少淡め(明度4前後)なので、濃いめのものよりも、淡めで美しいものを選ぶことが賢明です。

1カラットサイズのジュエリークオリティの価値は石のみで1個当たり2000USドルが目安です。(2001年現在)

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