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宝石辞典

無処理と加熱の見分け方


スリランカでサファイヤを手がけている研磨業者は、仕上がりの外観を見て、無処理か加熱したものかを判断できます。透明度と色の違いが美しさの差を生むからです。長年の経験から、無処理の原石がどのような仕上がりになるかを、知っているためです。

簡単に言うとサファイヤの色はチタンと鉄から生じます。これらの元素が無色または淡い色の石に入っていると、加熱で化学反応が起き、濃いブルーに変化します。コランダムの色をかえるための高い温度はしばしば宝石の内包物に大きな影響を与えます。

宝石のラボはこれらの内包物を処理の判定の重要な手がかりに使います。内包物の判定はプロにとっても難しいものなので他の機器が併用され、サファイヤの加熱の有無が判定されます。

加熱サファイヤの特徴


コランダムの加熱処理の温度は高く、ルチル、アパタイト、ヘマタイト等の他の鉱物の内包物を溶かしたり激しく破損します。48項のスノーボール・インクルージョンのような溶けた結晶がしばしば加熱処理サファイヤとルビーに見られます。

加熱コランダムに見られる別のタイプのインクルージョンは円盤のような亀裂です。これらは内包結晶が破損した時生まれた小さな亀裂です。溶けた結晶は亀裂に入り固まり、右の写真中央に見える円盤の様に縁を残すことがあります。

この種のインクルージョンは加熱処理プロセスの激しい特性を垣間見させてくれます。

シルク・インクルージョン


コランダムの中には細い針状のルチル(酸化チタニウム)が見られることがあります。これらは絹の糸のように見えるのでシルクと呼ばれます。写真のような60度で交わるシルク・インクルージョンが肉眼で見えるもの、10倍のルーペで見えるもの、30倍の顕微鏡が必要なものと、さまざまです。スリランカの無処理サファイヤの約30%は、シルク・インクルージョンを確認することができます。シルク・インクルージョンは加熱の時に溶けることが多いのでシルクの存在は無処理を示唆します。処理の時、シルク・インクルージョンのチタンがブルーを発生させることがあります。十分なシルク・インクルージョンがあると肉眼で見えるカラーバンドが現れます。

シルク・インクルージョン

品質の見分け方


モザイク模様の美しいバランスのとれたサファイヤであることを、テーブル面から確認することが第一です。無処理、加熱処理、色の濃淡に関係なく、モザイク模様のバランスの良さは、ファセットカットされた宝石の美しさを判断する基本です。

特にスリランカ産の無処理サファイヤは、自然の状態を大切にするため、姿・形の極端に悪いものが多く見られます。あまり神経質になる必要はありませんが、たとえばトータル・デプス(宝石の短辺に対する深さの比率)は50~80%の範囲のものであるという目安を、売り手が方針として定めておくことが必要です。そのような裏付けが、買い手を安心させる基本になるでしょう。またキズを厳しく見すぎて、美しく魅力的な素材を逃すことがないようにすることも大切です。肉眼でも目立つキズ、色ムラは別にして、美しさに大きく影響を与えないものは、枝葉のことと考えるのが適切です。特に絹糸のように見える典型的なシルク・インクルージョンが存在する場合は、天然の証でもあり、またその形にくずれのない場合は加熱処理されていないことが多いと考えられます。

シルク・インクルージョンは美しさを大きく損なわない限り、プラスの要素と考えることも可能です。

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