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宝石辞典

産地と色


宝石になる八放珊瑚は地中海、日本・台湾、ハワイ・ミッドウェイの3地域でおもに採取されますが、地域によって原木の大きさ、色、品質に大きな差があります。自然環境の差が各々の地域の珊瑚を特徴づけているのです。黒珊瑚は六放珊瑚に近いものでソフト・コーラルの一種です。

原石

Weight : 0.99 g
Size (mm) : L 11.8 × W 11.6 × D 5.23
Bleached

原石

Weight : 0.72 g
Size (mm) : L 11.9 × W 7.9 × D 5.27
Untreated

地中海サンゴ


珊瑚の歴史は、地中海珊瑚によって作られてきました。コラリウム・ルブルム(紅色の高貴な珊瑚)種に属し、濃淡の差はありますが、赤色のものです。色ムラがないため加工しやすいのですが、大きさが限られているのでおもにビーズ、カボション、ボタン型に加工されて市場に出ています。写真は濃い赤の珊瑚で、オックス・ブラッド(雄牛の血)とも呼ばれます。

日本・台湾


桃色、ボケなど、珊瑚の命というべき色合いの美しさを備えているうえ、原木は高さ1メートル、重さ10キログラムを超えるものがあり、大きさの点で断然ほかの地域にぬきん出ています。また赤や白のものも産出され、濃淡の幅も広くあります。20世紀初頭から原木のままイタリアに輸出され、ジュエリーの素材として使われてきましたが、赤やピンクの色ムラが多いため、加工が難しい素材です。また日本や台湾では、大きさを生かして、彫刻品が多く作られました。

原石

Weight : 15.37 g
Size (mm) : φ22
Untreated

原石

Weight : 1.64 g
Size (mm) : L 16.0 × W 12.0 × D 5.46
Untreated

ハワイ・ミッドウェイ


1960年代にミッドウェイの350~400メートルの深海から、宝石となるコーラルが採取されました。白、桃色、その混合や、ボケに似た美しい色など、さまざまな色の珊瑚が採れました。その中には、2,000メートルの深海から採れるものもあります。小さい珊瑚は色が濃いのですが、大きくなるにつれピンクがかかり、縞が入り、ついには写真のように、たくさん赤い斑点の散在するピンクに変わります。また大きくなるにつれ、亀裂の入り方が激しくなります。

品質の見分け方


ビーズとカボションの珊瑚の品質のポイントは、「形」「虫食い」と呼ばれる穴や亀裂の有無、「色ムラ」の程度です。形については、ビーズの場合、真円であるかで品質の判断をします。一方カボションであれば、輪郭と山の高さのバランスが大切です。「虫食い」は致命的欠点ですが、「色ムラ」や「斑点」が皆無のものは存在しません。それが肉眼で見て美しさを損なわない限り、全体のバランスで、善し悪しを判断します。

クオリティスケールのSは、ほんとうに稀少なもので、1パーセントしか存在しないジェムクオリティのうちの1割も存在するかしないかです。特に直径が10ミリを超えるものは、極端に数が少なくなります。自然が創った珊瑚は、厳密には一粒一粒すべて異なり、ひとつひとつに個性があります。むしろヒビと色ムラは大きな欠点とならなければ、この世の中にひとつしか存在しない証となります。ある程度の穴やキズは許容する市場を作ることが、宝石の世界では必要であると考えます。

ネックレスは、全体の色味と粒がよく揃い、糸を通す穴が珠の中心を貫いていることが大切です。

選び方


自分の好みの濃さのものを、予算に応じて選ぶことです。もちろんジェムクオリティがおすすめですが、直径10ミリを超えるジェムクオリティは、産出が限られています。採取の限られた大きめの濃い赤は高価ですが、色の濃淡の選択はまったくの好き好きです。明度1~2のSのエンジェル・スキンのような淡めのものも、近年人気が高まっています。ほかのどの宝石にもいえることですが、自然が作ったものなので、完璧なものはありません。ポイントを押さえたうえで、美しいと感じるものを選ぶことです。

10ミリのビーズのジュエリークオリティの価値は石のみで一個当たり30USドルが目安です。(2001年現在)

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