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一方、1カラットのツァボライトは、1,000個研磨されていたとしても、欲しいと思っている人が1万人しかいないとすると、その需要は10倍にしかなりません。このように、宝石の稀少性は供給よりも需要によっているのです。美しく稀少な宝石は、宝石商が故意に作り上げて価値を上げたものではなく、歴史に耐えた信頼性の高いものです。また、宝石の美しさは、一つひとつ個性を持つ、稀少性の高いものであります。宝石の美しさとその伝統は、奥深いのです。

宝石は装身具として身につけて美しさを楽しみ、心地よさを感ずることに意味があります。自然からの美しい贈り物を身近なものとして楽しみ、見る人を楽しませ、生活に豊かさを感じることが、本当の価値だと思います。「使った金がほんとうの金」という諺がありますが、守銭奴が遺していったお金が当人にとって価値がなかったのと同じように、使われない宝石も「価値はない」といえるのではないでしょうか。3分の1を手許におき、残りのものは金庫に入れて順繰りに使うなど、盗難への気配りは必要ですが、身のまわりにおいたり、着けたりして楽しむことが、宝石の本質です。

構想・素材・作りのしっかりしたジュエリーは、使う楽しみを大きくふくらませ、身に着ける人に自信を与え、受け継ぐ人に喜ばれ、そして資産として残っていきます。「楽しみ半分、資産半分」という言葉は、宝石の装身具を買う時の心の持ち方として適しているとともに、宝石の本質を言い尽くしていると思います。お金は使ってしまえばそれきりですが、50年、100年以上も前に作られ、使われてきたジュエリーは、オークションで見られるように、それに見合った価値が着けられて当初の何倍、何十倍にもなって売られていきます。
宝石は持ち運びに便利な財産です。戦災、震災等による経済の混乱期に、持ち主の力になってきたことは、歴史が物語っています。そのような力を宝石の装身具に感じている人間は、買う時に漠然と価値を期待してしまいます。期待される宝石にとっては複雑な心境でしょうが、宝石の資産性は長期に考えるものなのです。結果として残っていく宝石の価値の決め手は、品質です。だからこそジュエリービジネスにたずさわっているプロは、常に品質を把握し、それに応じた価格づけに意を注いでいるのです。そして宝石を手に入れようとしている一般の人々は、価格帯の高低にかかわらず、その品質の程度と、品質に応じた価格であるかどうかに興味を示してきました。

通常は宝石の価値は装身具と一体となって判断されます。宝石の価値はその装身具の構想の善し悪しによって左右されているからです。メーカーや店は宝石単体としてではなく、宝石の装身具として判断して価値を決めているのです。宝石には、あたかも神の決める価値が 存在するかのように思い込んでいる一部の人々の誤解を解き放ちたいと思います。

身に着けて十分楽しめる宝石は、その人の資産の何割かを占めているのが、自然なのかもしれません。古くからいわれている現金、不動産、宝石の財産3分法が、人間にとってバランスのとれた資産の持ち方であるというのは、重みのある言葉です。
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