神様のような人間が存在しないのと同じように、自然の創った宝石に理想的な美しさはありません。あるのは輝きのある特に美しいもの、美しいもの、美しさに欠けるものであり、その範囲に無数の品質が分散しているのです。
宝石の美しさは、その結晶の質が支配しています。そしてその美しさを引き出すのは、人間の研磨技術です。美しさを得られると判断された原石は高価で、その研磨には力のある研磨工が携わります。突き詰めて考えると、原石の品質の要素である、色相、透明度、彩度、多色性の方向と程度、形、色ムラ、色の豊かさ、インクルージョン、結晶の成長線、蛍光性の有無などが、研磨後の姿、輝きと複合して、宝石の美しさを作り出しているのです。
各々の要素を分析測定しようとしても、とても可能なことではありません。それはとてつもなく複雑なことで、たとえさまざまな要素が客観的に把握できたとしても、合計した数字で美しさの判定はできません
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数字だけの判断では、見た目と違ってしまうでしょう。たとえば、蛍光性の有無と強弱が美しさにプラスかマイナスかは、ケース・バイ・ケースです。この蛍光性一つをとってみても、美しさへの影響は目で見て判断する以外に不可能だと思います。インクルージョンを考えてみても、ネガティブクリスタル、シルク、フラクチュア(亀裂)などで透明度への影響は異なりますし、また同じようなインクルージョンでも、明度の程度によって美しさは違います。
現実にほかのすべてに申し訳ない品質の宝石にも、色の豊かさに欠けるものや、色に力のないものが存在します。つまり、分析では100点に近くても、美しさは20点というものが存在するのです。美しさに関係なく分析結果で品質を決めることは意味のないことです。大切なことは、一つひとつの要素を分析することではなく、全体を見ることです。冒頭で記したように、ファセットカットの宝石の美しさは、三次元のモザイク模様のバランスの良さなのです
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