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4.宝石の美しさ
 
現在研磨されている宝石の多くは面のつけられたファセットカットです。写真のスリランカのサファイヤには、濃いブルー、淡いブルー、紫、グレイがかったブルー、無色や反射面の調和のとれたMノザイクが見られます。このように宝石の美しさは平面的な色ではなく、三次元のモザイク模様のバランスからきているのです。そのモザイク模様のバランス全体を、我々の目が一度にとらえ、美しいと感じるのです。宝石に見られる濃さや深みはこのモザイク模様が作り出すものです。

また、こちらのページのダイヤモンドに見られるように、7色の分散光がモザイク模様に彩りを加えます。透明で輝きがあり、姿の良いダイヤモンドは、動きを伴うと分散光を放ってキラキラと輝きます。一方、カボションカットの宝石は純色で、かつ透明度ができるだけ高く、姿の良いことが、美しさのポイントです。
研磨された宝石の価値は、美しさの程度で決まるはずです。ほんのわずかな美しさの差が、大きな品質の差となり、その価値を左右します。美しさの程度を把握するのは難しそうですが、実は宝石のビジネスは美しさの判断があるから成立しているのです。本書の宝石の見方は、色彩学の理論や学者の分析をあてはめたものではありません。宝石の研磨地で使っている品質の分け方を基本にしたものです。美しさの区分は大まかなもので、境界は線ではなく幅広いものと考えて下さい。ビューティグレード SとA、AとBなど、隣との境界は曖昧ですが、次ページのルビーのようにSとB、BとDを比べると、美しさの差がはっきりとわかります。ビューティグレードという言葉は、厳密な等級ということではありません。マスタートーンを設定して比較して見ると、かなり安定した美しさの分類ができますが、美しさは常に主観の入るもので、正確な区別はつけられないからです。

宝石の美しさには、絶対的なものがあると思い込んでいる方がいるかもしれませんが、それはありえないことです 。
神様のような人間が存在しないのと同じように、自然の創った宝石に理想的な美しさはありません。あるのは輝きのある特に美しいもの、美しいもの、美しさに欠けるものであり、その範囲に無数の品質が分散しているのです。

宝石の美しさは、その結晶の質が支配しています。そしてその美しさを引き出すのは、人間の研磨技術です。美しさを得られると判断された原石は高価で、その研磨には力のある研磨工が携わります。突き詰めて考えると、原石の品質の要素である、色相、透明度、彩度、多色性の方向と程度、形、色ムラ、色の豊かさ、インクルージョン、結晶の成長線、蛍光性の有無などが、研磨後の姿、輝きと複合して、宝石の美しさを作り出しているのです。

各々の要素を分析測定しようとしても、とても可能なことではありません。それはとてつもなく複雑なことで、たとえさまざまな要素が客観的に把握できたとしても、合計した数字で美しさの判定はできません 。
数字だけの判断では、見た目と違ってしまうでしょう。たとえば、蛍光性の有無と強弱が美しさにプラスかマイナスかは、ケース・バイ・ケースです。この蛍光性一つをとってみても、美しさへの影響は目で見て判断する以外に不可能だと思います。インクルージョンを考えてみても、ネガティブクリスタル、シルク、フラクチュア(亀裂)などで透明度への影響は異なりますし、また同じようなインクルージョンでも、明度の程度によって美しさは違います。

現実にほかのすべてに申し訳ない品質の宝石にも、色の豊かさに欠けるものや、色に力のないものが存在します。つまり、分析では100点に近くても、美しさは20点というものが存在するのです。美しさに関係なく分析結果で品質を決めることは意味のないことです。大切なことは、一つひとつの要素を分析することではなく、全体を見ることです。冒頭で記したように、ファセットカットの宝石の美しさは、三次元のモザイク模様のバランスの良さなのです 。
加熱 スリランカ産サファイヤ
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