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5.宝石の濃淡
 
美しさの判定とここでお話しする宝石の濃淡は、宝石の品質を決定する重要なポイントです。本書で使用しているクオリティスケールは、美しさを横軸に、濃淡を縦軸にとったスケールです。

濃淡は明度(Tone)を7〜1に分け、5を中くらい、7を濃い、3を淡い、1をごく淡いとし、分光光度計のデータを参考に、肉眼で決定したものです。美しさのスケールが多くの要素の複雑な組み合わせである一方、濃淡は一直線上にある単一のスケールです。

色はルビーの赤、シトリンの黄、サファイヤの青といった、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫に代表される色相と、美しい純色であるか、どの程度グレイやブラウンを帯びているかを示す彩度、色の濃淡を示す明度の三つに分けて考えることができます。

明度の比較は、フェイスアップでマスタートーンと並べて見ると、はっきり判定できます。白い紙の上においたり、指の間に載せたりするなど、さまざまな条件の下で比較することも大切です。いずれの場合にも、マスタートーンが濃淡を正確に判定する鍵になります。マスタートーンが、比べる宝石の形、カット、プロポーションに似通っていて、大きさも同じくらいであれば見分けやすいのですが、現実問題として一つひとつ異なる宝石にマスタートーンを持つことは無理な相談です。実際には明度のマスタートーンを、異なった色にも共通して使うことがあります。ただし、サイズによって濃さやモザイク模様が変わるので、大粒石、小粒石のマスタートーンに分ける事は必要です。
ファセットカットの宝石をフェイスアップで判定する場合は、モザイク模様のバランスの印象の深さ、反射の影響、光線の入り具合など、三次元の濃淡を見ることになります。また、同じ明度を上中下に細かく分けることも可能ですが、通常の場合、あまり細かく分けても意味はありません。しかし、5カラット以上のサファイヤ、3カラット以上のルビー、1カラット以上のダイヤモンドのジェムクオリティの濃淡は細分化されて、価値が判断されています。

ダイヤモンドのカラーグレードを決めるとき下の図に示したようにファンシーイエロー・ダイヤモンドはフェイスアップで濃淡を判定し、無色から淡い黄色の明度2+までのダイヤモンドは側面から見て判断します。その方がファセットが造りだす強い輝きや分散光に惑わされることなく、濃淡の程度をより正確に、かつ客観的に判定できるからです。D〜Zの等級づけは細かい濃淡の見分けを必要とします。しかしながらダイヤモンドが装身具にセットされた時はD〜Zのスケール上の隣同士の差は見分けがつきません。濃淡の差は見た目ではっきり判るレベルで価値に反映されるべきです。
また、宝石の濃淡はインクルージョンの見え方を変化させます。その種類によりますが、色の濃い宝石では、かなり大きなインクルージョンも目立ちません。しかし淡い宝石では、それが目立ちます。つまり、宝石の品質を把握する手段として、インクルージョンの大きさの程度を客観的な尺度にするという考え方は、明度との関連を考えなければ無意味なのです。それよりも自然の証である良質のインクルージョンであるのか、逆に耐久性を損なう欠陥であるのかの判断が大切なのです。色が濃くて見えにくい場合も、専門家はルーペを使って耐久性に影響する欠点や、亀裂などに注意を払わなくてはなりません。

伝統的に好まれる明度に需要が集まるので、各々の明度の供給がほぼ同じとすると、好まれる明度の稀少性が高まって価値が高くなります。宝石種によってダイヤモンドは明度0、アクアマリンは3、ルビーは5という具合に、特性、供給の限界、伝統などの理由により、価値の高い明度の領域は異なります。また、淡くても美しいものと、美しさが十分ではないものがあります。カボションはモザイク模様の輝きの美しさが得られないので、ある程度の濃さがないと、美しさが発揮できません。また、特定の時期に需要と供給に変化が生じると、好まれる明度の領域が変化し、価値も変わります。流行や新鉱山の発見が、市場を動かすのです。
GIAシステムでは、D〜Zは側面から判定され、濃淡の差は細かく分類される
D E F
無色
G H I J
ほぼ無色
K L M
わずかに黄色
N 0 P Q R
非常に薄い黄色
STUVWXYZ
薄い黄色
フェイスアップで見た場合、濃淡の差は小さい
ここからはファイスアップで判定されます
ファインシーイエロー
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