生きたトンボは一カ所に止まらせておくことができません。こちらからあちらへ、次々に居場所を変えて移っていきます。「そんなトンボを宝石で作って、好きなだけ自分に止まらせておきたい」という作者の意図が、このトンボを生みました。リアルになりすぎると気持ち悪くなる動物がしばしば見られます。あまり具像化されずにあくまでも美しく、しかしトンボだとわかることを前提に構想が練られたのだと思います。
このブローチは、胴体をカボションカットのエメラルドとループ留めで表現し、トンボのイメージを膨らませています。カボションカットを生かした見事な構想です。エメラルドは透明度の高い、高品質のものが使われています。ファセットカットをカボションにリカットしたもので、「安く作るのではなく、いかに美しく心地のいいものを作ろうか」というプロデューサーの気持ちがこの素材から伝わってきます。 |
下のドームは、ダイヤモンドのパヴェセットに11個のエメラルドカボションをセットしたリングです。このリングのエメラルドは、飾ってある時は明度3と淡めに見えますが、指にはめると濃くなって明度4 1/2ほどの良い美しいグリーンを発揮します。リングの裏から光が入る時は、内側の大きく取った裏取りが光を宝石に通して、淡く見せるのです。カボション、ファセットを問わず宝石は明暗や太陽光、電灯光、蛍光灯など、光源の違いで見え方に差が生じます。ジュエリーを選ぶ時は、自分が身に着ける時の状況に近い光線で判断することが大切です。宝石店の強い光線下で美しく見えても、弱い光の所では暗すぎて美しく見えないものは避けるのが賢明です。 |