諏訪恭一、ジュエリーを語る

1. ジュエリーとは何か。〜受け継ぐ人に喜ばれること〜

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15年ほど前のことになりますが、あるお店の販売員さんから、「今、街にはいろいろなジュエリーが溢れていますが、一体どこまでがジュエリーと呼べるのですか」という質問を受けました。その場では返答に窮したのですが、しばらく経ってこのように説明しました。

ジュエリー、つまり身に着けて楽しむ「装身具」は、同じように見えても、3つの全く別のものに分けられます。1つ目は、宝石の美しさを引き出して仕立てた「宝石の装身具」で、何回も何回も使って楽しみ、次の世代に受け継がれてゆくものです。大粒のダイヤモンド・ソリテール・リングや、小粒のダイヤモンドを並べて美しさを引き出したバンドリングがその例です。

2つ目は、金やプラチナで作って、個性ある形を売る「貴金属の装身具」です。ブランドのアイコンとして大いに流行するものや、その時代のファッションにあわせてプロモーションされるものなどがあります。しかしトレンドでなくなると身に着けなくなり、いつかは溶かされてしまいます。貴金属地金の値上がりを受け、貴金属の装身具は、今盛んに還流しています。還流したものは精錬され、新たなジュエリーに作り変えられます。

3つ目は、ガラスや合成石の「その他の装身具」です。コスチュームジュエリーとも呼ばれ、壊れたら修理できないものがほとんどで、いらなくなると捨てられてしまいます。

皆さんがジュエリーを選ぶとき、これは将来受け継がれるか、溶かされるか、捨てられるか、自問自答すると、支出に見合った間違いない判断が下せると思います。

50万円のジュエリーも、宝石の装身具であれば、50年間毎日のように身に着けて楽しむことができ、1年間に1万円、日に27円に過ぎません。そしてそれはそのまま存在し、次の世代に受け継がれます。このコラムでは、私が目で見て確かめた、宝石とジュエリーの本質、そしてあるべき姿、楽しみ方を、具体的な事例を挙げながらお伝えしてゆきたいと思います。

2010/11/1