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宝石辞典
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ジュエリーは、それを一生の間に何回つけたかでその使用価値が決まります。100万円のものを年5回40年にわたって身につけたら1回当たり5000円で、しかも40年後にもその価値は残っています。インフレで値が上がっていたら、ただでつけておつりがくることになります。また身につける1回ごとに100万円の価値があるとしたら、2億円の使用価値があったことになります。いずれにしても、何回つけられるものだったかが適切な選択であったかどうかの鍵となるのです。あまり使わないと考えられている婚約指輪も、年に何回かつけると相当な回数になるし、ダイヤモンドの立爪にマッチするバンドタイプリングを組み合わせてつけると、かなり華やかな気品のある指輪のつけ方として楽しめます。

現在の日本社会では、日常生活の中で本物のジュエリーがつけられていますが、改まってジュエリーをつける機会は二通り考えられます。一つは結婚披露宴などお祝い事のパーティ、もう一つは旅行や学校行事でしょう。階層社会ではない日本では、欧米のようなパーティはほとんど存在しないため、豪華なネックレスやイヤリングはつける場がありません。ジュエリー業界で「つけて行ける場所を作ろう」ということが叫ばれていますが、欧米式のパーティが開かれるような社会基盤がないので、現状では難しいでしょう。やはり日本の社会や風習に既したジュエリーのシーンを大事にして、育てていくのが本筋でしょう。

宝石は、照明や周囲の光線で美しく見えたり美しさを失ってしまったりと、大きく変化します。店頭の強いスポットライトにあてられていたルビーが、自宅の蛍光灯下で黒ずんで見え、これが同一のものかと目を疑った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

光線による見え方の差は、宝石の特質の一つです。一般に、赤の宝石であるルビーは電灯下でより美しく、青系統のサファイヤは蛍光灯下でよりはっきりしたブルーが見られます。ダイヤモンドは太陽光線や電灯下で見ると、より虹色の分散光が美しく発散されているのがわかります。

宝石をつける人と買う人は、同じ場合と異なる場合とがあります。日本の中高年の女性は数十万円のものは自分で決めて買う場合が多いようです。日本の社会では、夫の給与振り込みが幸いして妻が"大蔵大臣"のことが多く、またジュエリーはいずれ娘や嫁に譲るものだから無駄遣いではないという理屈も手伝って決断されるのでしょう。米国では、クリスマスに夫が購入して妻に贈るのが習慣です。婚約指輪は、日本でも花婿が購入して花嫁に贈ります。婚約指輪に給料の3ヶ月分をかけるのは賢明なことだと思われます。婚約指輪は他のギフトと違って、贈った後に花嫁とともに自分のとこおrに来ることを考えれば、他を削ってでも婚約指輪に思い切り投資して愛情を表現するのは理にかなっているといえます。すでにダイヤモンドを持っている花嫁には、ルビー、サファイヤ、エメラルドのジェムクオリティを主石に使った、気品ある指輪を贈ることをお勧めします。

次ページの表は、宝石をモース硬度によって10のダイヤモンドから5~6のトルコ石、ラピス・ラズリを順に並べたものです。硬度7のアメシストまでは、エメラルドを除いて通常の使用での耐久性に問題はありません。エメラルドは硬度はともかくとしてもろいので、スポーツ、炊事、庭の手入れの時などにはつけられないのです。2年間はめ続けたある老婦人のエメラルドのリングは石が欠け、しかも石が落ち、見られないものになってしまいましたが、この方は毎日はめたまま庭の手入れをされていたそうです。

ダイヤモンドも長期間つけると若干のキズがつきますが、それは還流商品を見るとよくわかります。仕上げの研磨をすれば修復しますが、2%程度石目方が減少してしまいます。それを考えて、1カラットのダイヤモンドを買う時は1.00~1.02は避け、余裕をみて、1.1カラットとか1.2カラットを選ぶのが賢明です。

また、ダイヤモンドは油を吸いつけやすく、表面が曇るとせっかくの輝きが低下してしまうので、ときどき洗浄するとよいでしょう。一番安全で効果的なのは洗面器にぬるま湯を入れ、石けんをつけた歯ブラシでダイヤモンドの横を磨くことです。すすいだ後はタオルで拭くだけです。万が一の石取れ、石落ちにそなえてシンクで直接洗浄するのは避けましょう。次ページ表のジェダイト、オパール、トルコ石、ラピス・ラズリの不透明石は裏の汚れをとりたてて取り除く必要はないのですが、すべての透明石の裏の手入れはダイヤモンドと同様、非常に大切です。なぜなら、その美しい輝きと色は裏から入る光や上面から入る光の屈折によって支えられているからです。自分の宝石を最高の状態に保ちつつ楽しむのは、すばらしいことです。

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