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宝石辞典
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シトリンの語源は、フランス語でレモンを表す「シトロン」で、若干黒みのかかった黄色のクオーツ(水晶)が、シトリン(黄水晶)として知られてきました。右の写真のように黒みがかった色のものが、天然のシトリンです。しかし、これは宝石として通用することはありませんでした。

1883年ブラジルで、まったくの偶然からアメシスト(紫水晶)を加熱すると、鮮やかな黄色に変化することがわかりました。この色がトパーズという宝石に似ていたことから、長い間、間違って「ゴールデン・トパーズ」と呼ばれました。しかしながら、トパーズはクオーツとはまったく異なる鉱物です。現在では下の写真のイヤリングに使われているような加熱アメシストが、シトリンと呼ばれてジュエリーの素材となっています。

多くのアメシストは約450℃で加熱されると、シトリンに変化します。この加熱は、その宝石が持っている潜在的美しさを引き出す容認出来る処理と理解されています。

多くのアクアマリンも、グリーン・ベリルを420℃近くで加熱する処理が行われており、シトリンと同様、一度変化した色は元には戻らず永続します。

シトリンやアメシストと関連の深い町に、ドイツのフランクフルト西南西120キロに位置するイーダー・オーバーシュタインがあります。1497年にこの周辺から、クオーツの一種のメノウが産出しました。その後アメシストも産出し、ここで研磨が続けられました。一時はメノウの原石の枯渇で下火になったこともありましたが、1830年代にブラジルに渡ったイーダーの人々がメノウの原石をここに送って、活気を取り戻させたのです。1900年頃には研磨にモーターが使用され始め、メノウ、アメシスト、シトリンがロシアのサンクト・ペテルブルグをはじめ、ヨーロッパ各地へ盛んに輸出されました。現在もイーダーには約400人のカッター(研磨工)がおり、カラーストーン研磨の世界拠点の一つになっています。シトリンはアメシストやメノウとともに、イーダーを支えてきた宝石です。

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