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宝石辞典
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ファンシーピンク・ダイヤモンドのピンクは赤の淡い色なので、ちょうど赤の絵具を水で薄めていく過程が、明度(Tone)の段階と考えられます。それに茶色やオレンジ色が加えられると色の純粋さが失われ、美しさの程度は低くなります。

多くのカラーストーンやファンシーカラー・ダイヤモンドでは、研磨の時に原石の色の偏りが問題となります。ファンシーカラー・ダイヤモンドの多くが、ラウンドブリリアント以外のファンシーシェイプであるのは、原石の目減りを抑えながら色を濃く見せる配慮と考えられます。上から見た時、いかに色を濃く美しく見せるかは、カッターの腕の見せどころです。また、特に美しさを大きく損ねるキズでない限り、キズよりも色が重視され、価値判断も色に重点がおかれます。

上の写真のリングのファンシーピンク・ダイヤモンドは、オーストラリアのアーガイル鉱山産のものです。この鉱山は1979年に発見され、1983年に商業生産を開始しました。

その後大規模な開発が進められ、1995年の時点では世界のダイヤモンド生産量の40%を占めています。しかしほとんどが低品質のダイヤモンドで、ブラウンみのものが多く、金額では5%を占めるにとどまっています。その中で稀に産出されるファンシーピンク・ダイヤモンドは貴重です。ここでは小粒なものしか採れず、研磨前で1.5カラットを超えるものはほとんどありませんが、1980年代にファンシーカラー・ダイヤモンドの認知度を高めた功績は計り知れません。アーガイル鉱山のものは、青みの強いパープル・ピンクが特徴です。

次ページの写真のファンシーピンク・ダイヤモンドは淡めですが、桜色の美しいものです。この写真に見られるピンクと白のバランスのとれたモザイク模様が、ファンシーピンク・ダイヤモンドの美しさです。産地は特定できませんが、インド、ブラジル、タンザニア、ザイール、アンゴラ、ロシア(フィンランドに近いアーケンシェル鉱山)、南アフリカのプレミア鉱山の、いずれかであると考えられます。

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