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宝石辞典
ラピス・ラズリ (無処理)

ラテン語でラピスは”石”、ラズリは”青”を意味しています。しかし中性になるまでラピス・ラズリという呼称は使われず、古代ギリシャ・ローマではこの青い石をサファイヤと呼んでいました。エジプトでは紀元前3100年ごろからラピス・ラズリのビーズ、スカラベ、ペンダント、象眼のジュエリーが使われていました。ラピス・ラズリの産地はアフガニスタン北東部のバダクシャンで、この時代、長い旅をしてエジプトまで運ばれていたということになります。ラピス・ラズリは宝石および魔除けとして貴ばれ、また粉末にして薬や化粧品としても使われていました。

仏教徒にとってはラピス・ラズリは、平常心を保ち邪心を取り除く力を持つものとされていました。紀元前6~5世紀、孔子の時代の中国でラピス・ラズリの髪飾りやベルト飾りが彫られていたのはこのためでしょう。中央アジアに位置するアフガニスタンのラピス・ラズリは東西に持ち出され、シルクロードから中国をへて日本へももたらされました。奈良の正倉院にはラピス・ラズリの装身具が納められています。ラピス・ラズリは和名を瑠璃といい、日本では古くからサンゴと並んで親しまれてきた宝石の一つで、多くの文献にその名を見ることができます。

ラピス・ラズリの原石はトルコ石、ジェダイト、オパールと同様に、岩石状の固まりとなっています。この中で色のよい美しい宝石にカットされるのは、限られた部分だけです。私の経験では、次ページの写真のように美しいものは千に一つ程度です。またラピス・ラズリには着色されたものも多いので注意が必要です。天然のものは、アセトンを脱脂綿につけて表面を拭いても色落ちしないので、着色の有無を簡単に判定しることができます。

ほかにもラピス・ラズリは時計の文字盤、カメオ、置物などさまざまなものに使用されています。ラピス・ラズリの硬度は5 1/2で、硬度7の水晶によって傷つきますが、比較的耐久性は強く、欠けることはめったにありません。

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