諏訪恭一、ジュエリーを語る

6. ダイヤモンドジュエリーの価値は4Cでは決まらない。

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宝石の価値は、仕立てて身に着け、美しさを楽しみ心地よさを感じる所にあります。金庫やタンスにしまい込んで、そのまま保管しておくものではありません。前回も述べたように、身に着けないものは宝石のようで宝石でない、宝石としての価値を失っていると言っても過言ではありません。

身に着けないダイヤモンドジュエリーの代表は、0.2や0.3カラットのソリテールリングでしょう。多様なジュエリーが着けられている中で、生涯を通してこの手の指輪をはめている女性はあまり見かけません。このサイズのダイヤモンドは1粒では存在感が十分でなく、年を重ねて使えるものではないのです。しかしお店には、「ダイヤモンドの価値は4Cで決まる」と思い込んで、グレードが良ければ0.2や0.3カラットのソリテールも価値があると勘違いした商品が溢れています。

確かに研磨地では、ダイヤモンドの値付けに4Cを使います。しかしメーカーが良い構想でサイズやシェイプを選び、美しいジュエリーに仕立てなければ、身に着ける価値あるものにはならないのです。ラウンドのソリテールリングでは、1カラットや2カラットのサイズが、分散光やきらめきのバランスがよく、輝きが顕著でかつ指に馴染む大きさです。1粒では輝きが十分でない小粒のダイヤモンドは、1列に並べてセットすると連鎖の輝きを発し、大粒では得られない美しさを持つ日常使いの指輪に仕立てられます。どちらも10年後、30年後、50年後にも存在し楽しめる価値のあるものです。

4Cは素材のコストであって、ジュエリーの美しさや価値に比例しません。料理が下手だと、良い食材を使っても、旨いものにならないのと似ています。美しい装い、旨い味が価値の本質です。

2011/2/1