諏訪恭一、ジュエリーを語る

4. 何故、石目方を打刻しないのか。

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私も十数年前迄は、ジュエリーには宝石の目方を打刻することが正しいと思い込んでいました。

しかし、欧米の一流のお店の商品を見ると、店の刻印と、貴金属の金性のみで、特別のものは別にして、石目方が打刻されているのは少ないことに気付きました。小粒のものや数を使ったジュエリーに打刻すると、誤解を生むことになるからです。

例えば、10個のダイヤモンドがセットされたリングの裏に1.00ctと打刻されていても、それが高品質ならば50万円、低品質ならば10万円ということがあります。カラットを打刻して、石目方を強調するのは「これだけのカラットがあってこの価格、安いでしょう」と言って低品質のものを安く見せかけて売る手段になるかもしれません。きちんとしたお店が、厳選された宝石を使って美しく仕立てられたかどうかが大切なのであって、石の重量の打刻は本質ではないのです。

別の理由は、自社の同一モデル間で起こることですが、例えば1.00ctを最低石目方として、実目方が1.03、1.02、1.01、1.00になるとします。1.02ctのサンプルを見たお客様のジュエリーが1.00ctで仕上がってきたとすると、お客様はサンプルの方が大きくて良かったのではないかと錯覚されます。

サイズをきちんと合わせて、美しく仕上げた結果、石目方が異なるものなのに始めに石目方ありきは間違いなのです。もし目方にこだわって同じモデルで1.1ctがセットされていると、深くて輝きの劣るダイヤモンドの美しくないジュエリーになってしまいます。ダイヤモンド原石は小粒といえども、二つとして同じものはないので、同じサイズの研磨上がりのダイヤモンドも一粒一粒深さは微妙に異なり、目方に差が出るものです。1カラットを超える大粒石を別にして、石目方は打刻しないのが本当です。もし必要ならば最低石目方を保証書等に記載するのが良いのではないでしょうか。

石目方を打刻するのは、商品管理がやり易いという業者の都合もあると思います。しかし、その石目方に振り回されるのは本末転倒です。大切なことは石目方ではなく、お店の印と金性がジュエリーの裏側にはっきりと打刻されているのを確かめることです。お店が実印を押して責任を持ち、保証しているということになるからです。

2010/12/14