アクアマリン (加熱)

第1章 24の宝石
アクアマリン (加熱)

古代ローマ時代から船乗りを守るといわれ、その後、旅の安全を約束する宝石として知られてきました。

Photo: Necklace, Platinum, Aquamarine 5pcs, Heated, 7.00ct
Diamond 14pcs, 2.34ct

アクアマリンは今からおよそ2000年前にローマ人によって名づけられ、その語源はラテン語で”水”を表すアクアと”海”を表すマリンから来ています。船乗りを守り良い旅を約束する宝石といわれ、また激情を和らげ、これを身につけると沈着冷静になれるともいわれています。アクアマリンはエメラルドと同じベリルという鉱物で、ダイヤモンドを10とした時のモース硬度は7 1/2〜 8。エメラルドをグリーンにする元素のクロムやバナジウムに代わって、微量(0.5〜2%)の鉄がアクアマリンの淡いブルーを生み出します。同じ功ぶるでもエメラルドがショックに弱い宝石であるのに対し、アクアマリンは耐久性に優れ、また色が全体に分散していて透明度が高いのが特徴です。

アクアマリンは清楚な雰囲気を持った宝石として、多くの人々に好まれています。次ページの写真に見られるような明度3のピュアなブルーが最適といえます。任意に行ったアンケート(300名・男女の比率は半々)では、特に女性で3+よりも3を好むケースが多く見られました。ブルーがあまり濃すぎないほうが、柔らかさや落ち着きを感じさせるのでしょう。色みが涼を呼ぶので、春から夏にかけて身につけられることが多い宝石です。アクアマリンのカットはエメラルドカット、オーバルカット、ペアーシェイプカットが大半を占めます。写真のようなジェムクオリティのアクアマリンは、アクセサリークオリティのルビーやサファイヤよりも遥かに美しく、貴重なものです。

アクアマリン (加熱)

Name of mineral : Beryl
Mohs hardness : 7 1/2〜8
Refractive index : 1.577〜1.583
Specific gravity : 2.72

Heated
Gem Quality
Size (mm) : L 18.7×W 12.7×D 8.00
Weight : 9.34 ct

特色と見分け方・選び方

産地の特色

19世紀初頭、ブラジルのミナス・ジェライス州とロシアのラウル地方から、良質のアクアマリンの原石が産出されました。最大のものとしては、1910年に発見された110キログラムという記録が残っています。現在の主な産地はブラジル、ナイジェリア、ザンビア、モザンビーク、マダガスカルです。この中で、ブラジル産は現地で研磨されて輸出されるものが多く、他の産地の原石はドイツ、インド、タイに持ち込まれて研磨されています。

アクアマリン (加熱)

ナイジェリア産

アフリカの中西部に位置するナイジェリアは、1983年以降の新しい産地です。明度も大きさもさまざまな原石が産出されますが、中でも多いのは1〜2カラットの濃いめの高品質のものに研磨できる原石です。アクアマリンは比較的キズが少ない宝石ですが、ナイジェリア産はブラジル産に比べるとややキズが多く見られます。加熱するとキズが原因でヒビ割れが発生することが多いため、加熱処理をせず、天然のままのものが多いのもナイジェリア産の特徴です。

ブラジル産

アクアマリンはブラジル産という定評があります。確かに大粒のものはブラジル産である場合が多く、色は淡めですが純色に近いキズの少ないものhが見られます。多くのブラジル産アクアマリングリーンみを取り除くため加熱され、より純粋な美しいブルーとなり、この色は変わることがありません。ブラジル産は原石の形を生かしたカットが特徴で、ファンシーシェイプカットが多く見られます。

アクアマリン (加熱) アクアマリン (加熱)

モザンビーク産

アフリカのモザンビークは1991年から採掘が始まったごく新しい産地です。かつてブラジルのミナス・ジェライス州のサンタマリア鉱山から、色が濃いめの非常に良質のアクアマリンは産出しました。モザンビーク産のものはこれにちなんでサンタマリア・アフリカーナと名づけられ、濃いめの高品質のアクアマリンの代名詞になっています。時に濃すぎてグレイがかるため、美しさに欠けるものがあります。

品質の見分け方

クオリティスケールは宝石の品質を表す物差しで、”色の濃淡(明度)”と“美しさの程度(ビューティグレード)”で表します。

アクアマリンの善し悪しの決め手は”形の良い美しいブルー”と”適度な濃さ”で、明度が3+〜3のビューティグレードSがジェムクオリティ、その周りがジュエリークオリティ、1+以下とB、C、Dがアクセサリークオリティに大別されます。ゴロ石といわれる全体の形が悪いものや、グレイみやグリーンみがかったブルー、肉眼でキズが見えるものはアクセサリークオリティです。また低品質の原石は、次ページ図の右例のようにカボションカットに研磨されます

アクアマリンは明度4以上の濃いものをほとんど産出しません。その中でも濃いものが良いとされていますが、濃いものにはグレイがかったものが多く、美しさに欠けます。色が濃くても、グレイみが強いとビューティグレードが下がってしまいます。一見単純なアクアブルーも、明度とビューティグレード、産地などで区分すると100以上もの品質に分かれるのです。

他のブルー系統のものにもあてはまりますが、アクアマリンは蛍光灯で見た方が色を識別しやすい宝石です。

選び方

アクアマリンはエメラルドに比べ格段に安く、それでいて品格のある宝石です。明度は2以上で、グレイがかっていないビューティグレードSのものを選ぶのがコツといえます。先にも述べましたが、明度が濃くなるとグレイがかるものが多く、これに高値がつけられている場合があるので注意が必要です。

2〜3カラットの高品質のものに良いデザインを施した、作りのしっかりしたものをジュエリーとして楽しむか、または思い切って10〜20カラットの大粒石で美しいアクアブルーを楽しむのも良い選択です。また色のこもる5カラットを超える大粒石と、原石の歩留りの良いファンシーシェイプカットは、割り安なのでお勧めです。

3カラットサイズのジュエリークオリティの価値は、石のみで、1個当たり800USドルが目安です。(1998年現在)

クオリティスケール

QUALITY SCALE
AQUAMARINES
Heated

クオリティスケール
価値ある一点

クオリティスケール上でみた
品質の3ゾーン

クオリティスケール

3カラットサイズに研磨される
宝石中で占める個数の比率

ピラミッド

価値指数表

ct size GQ JQ AQ
10 12.0 5.0 1.5
3 3.6 1.0 0.3
1 1.0 0.3 0.1
  GQ-Gem Quality
  JQ-Jewelry Quality
  AQ-Accessory Quality